髭が、オジエ。
エルフ。30台半ば。
アヤの護衛騎士。不死。
眉毛無いのが、エティエンヌ。
エルフ。30歳ぐらい。
アヤの護衛騎士。不死。
同郷のオジエとエティエンヌ。幼少の頃から剣を習い、切磋琢磨していた。
幼馴染の二人は仲が良く、互いにイーティ、オジィと呼び合っていた。
成人した後、アムリタ家傘下のブハン家に仕え勇名を馳せる。
アムリタ家主導によるヴァレンウッドの吸血鬼殲滅作戦に参戦。
熾烈な戦いの最中、強力な魔法を被弾したエティエンヌは命を落とす。
深手を負いながらもオジエは、息絶えたエティエンヌを抱え戦場を離脱した。
任務の途中であったが、そんな事はどうでもよくなっていた。寝食、苦楽を共にした無二の友人を失った衝撃でオジエは正常な思考を失っていた。
失意の中、彼を蘇生する術を模索する。
物心ついた時から、探している物を見つけられる能力があった。自身は特殊な能力とは思っておらず、なんとなく、ここらへんかな、と見当がつく程度のモノと認識していた。
オジエが探し当てたのは、アムリタ家の始祖から仕える賢者だった。
半神と化している、その賢者は、いかな英雄、強大な魔法使いであろうとも見つけるのは叶わぬ存在である。
その領域に立ち入る方法を見つけるのに、200年余りかかった。
「定命の身でよくここまで来られたな」
「あんたが何者かはよくわからないが、こいつを・・・イーティを生き返らせられる人だって事はわかる」
「やれ、ロラン以来だな。私に頼み事なぞしてくるのは」
「ロラン・・・?それより頼む、イーティを・・・」
「急くな。名は?」
「オジエ」
「オジエよ、おまえの装束を見るに、アムリタ家由来の者だろう。ロランとは、アムリタの開祖よ。おまえと同じ能力を有していた」
「俺と同じ・・・?俺は特殊な能力など持っておらぬ。そんなことよりイーティを蘇らせてくれないか?なんでも捧げる。命でもなんでもだ」
「私を見つけ、この領域に入ってきただけでも賞賛に値する。生き返らせてやろう。私は代償など求めぬ」
「おお・・・!ありがとう・・・よかった・・・」
「大事な親友のようだな」
「ああ。生死を共に、泣き、笑い、何をするにもこいつと一緒だった・・・俺の半身のような奴なんだ・・・」
「なるほど。友の死は辛かろう。オジエ、人の生死をコントロールするのには、やはりなにがしかの代償が必要だ。私がいらぬといっても、世界のどこかで何かが、その死した友人が生き返ったが為に、その代償を支払わなければならぬのだ」
「・・・」
「それでも生き返らせるか?」
「やはり、俺が何かを・・・」
「死には生が要る。おまえの友人が生き返ると、おまえは死ぬ。それは儚い。そうは思わぬか?」
「構わない」
「おまえは構っても、生き返った友人は死したおまえを見てどうすると思う?」
「・・・こいつなら、俺を蘇らそうとするかもしれん」
「堂々巡りではないか」
「では、どうすれば・・・」
「一つ方法がある」
「!」
「死した友人が生き返った後、死にも等しい呪いを与えるのだ」
「ど、どんな呪いだ・・・」
「私にもわからぬ。蘇生の術は心得ておるが、いまだ試した事がないゆえな」
「・・・」
「どうする?死した友人にとって、蘇った現世は生き地獄となるやもしれぬが?」
「・・・俺が・・・」
「・・・」
「俺が、その呪いを被ることはできないのか?」
「ほう。できぬこともない」
「では、頼む!」
「呪いを完全に断つ事はできぬ。二人で分かち合う形になるだろう。・・・ふむ、なかなか良い妥協案だな」
「やってくれ!」
「わかった。術は瞬時に完了する。今、この場で復活するわけではない。よいか?我が蘇生の術は、純粋に蘇生するのでは無い。時の流れを少し変えてやるのだ。さあ、目を閉じよ。それと、圧縮詠唱ゆえ耳も閉じるのだ・・・」
・・・
オジエとエティエンヌは、ヴァレンウッドの、魔法を被弾した場所にいた。吸血鬼が死の間際に放ったその魔法は周囲を焼き尽くし、周りにはオジエとエティエンヌ以外、誰も生き残っていなかった。
「エティエンヌ!」
「おう、オジエ!」
「大丈夫か?すごい魔法だったが」
「ああ、こりゃ駄目かな、と思ったが・・・誰か防護魔法でもしてくれたのか?傷一つないな」
「ふむう、俺も火傷一つない。不思議だな・・・サグラダ様が何かしてくれたのかもしれんな」
「うむ」
蘇生の代償は、彼らの寿命と思い出。
共に過ごした良き思い出は霧散し、寿命は反転し、永久に生きる呪い。
吸血鬼殲滅作戦で大功を為した彼らは、アムリタ家当主デイム・アヤの護衛騎士に取り立てられる。
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