ムー・スー
ドーンガード所属。
年齢不詳。
スー家は赤い髪、赤い目を生まれつき備えています。
3代前まではなんらかの特殊能力を持っていたようですが今は無くなり、普通の人間と変わりはありません。
ムーは、ニルンの北方のある小さな島国で生まれました。
一家は漁をして細々と暮らしていました。
5人兄妹の末子であるムーは、家族の寵愛を受けて育ちます。
父と2人の兄達からは、漁と狩猟を教えてもらい、母と2人の姉からは、獲ってきた魚や動物、山菜の料理の仕方を教えてもらいました。
冬はとても厳しく、漁、狩りに出れず、夏の間に備蓄した食料で難をしのいでいました。
ムーは冬篭りが好きでした。おしゃべりな兄姉達が色んな話をしてくれるからです。
父もよくしゃべりよく笑い、ムーにとっては歳の離れた兄のような人でした。
母は寡黙な人で少し離れたところから、編み物などをしながらムー達の話を聞いていました。
ある年の冬、今までにない猛烈な寒波がやってきました。
ある程度の寒さなら耐えられる一家ですが、この年は日中も凍えるような寒さで、暖炉の傍から離れることができませんでした。
薪も絶え、食料も尽きようとしていました。
寒波は止む気配無く、一家は窮地に陥ります。
父と長兄は、決死の覚悟で森へ食料、燃料を取りに向かいました。
…
寒波が去った時、最後に残っていたのは、母とムーだけでした。母は半死半生の状態。ムーも狩りに出る体力は残っていませんでした。
近隣の住民の住居までは片道、男の足で1日の距離。ムーは母と共に死を迎えようとしていました。
寒波で生き残った島民は数十名でした。生き残った者達で結成された救助隊がムーを発見した時、かたわらに一人の女性が佇んでいました。
一見して、この島の者では無い風貌をしています。
「おおい、スー家の知り合いか?」
「ああ、久しぶりに様子を見に来たのだ」
「そうか・・・亡骸は弔っておくよ」
「いや、一人生きている」
「なに?そんなまさか。どうみても・・・いや、息があるぞ!おい、子供がまだ生きているぞ!」
「母親がいたたまれないな」
「・・・リダさんがずっと抱きかかえて暖めようとしていたのか・・・あんた、見てただけなのか?」
「・・・少し魔術を心得ている。子供は大丈夫だ」
「回復の魔法か?」
「いや、それでは追いつかない状態だった。・・・私が見つけたのはあなた達がくる数時間前。一目、母親のほうは数秒後には息絶える状態、子供のほうも時間の問題だった」
「要領を得ないな、何をした?」
「母親の生命力を子供に移した。血縁同士でよく馴染む上に、子供を救いたい一心のエネルギーは、あと1日分の生命を作り出せた」
「・・・怪しげな魔術は好まんが、ムーの命を救ってくれた事は感謝する」
「少し同行させてもらってよいか?スー家由来の者なのだ」
「・・・名は」
「ルーンだ。島から脱出する手助けもしよう」
「おかしなマネをすると、容赦せんぞ」
「用があるのは、あの少女、スー家最後の生き残りだけだ・・・看護を任せてくれれば悪いようにはしない」
ルーンと救助隊の献身的な介護により、ムーは意識を取り戻します。
「目覚めたか」
「う・・・お母さんは・・・?」
「・・・まだ会えない。手当てをしている」
「やだ。会いたい、会わせて」
「君が元気になれば、会わせられる。立てるか?立てないだろう。そんな姿を見れば、母は悲しむぞ。もう少し眠るといい」
「でも・・・!」
「・・・」
ルーンが短く口走った一言で、ムーは眠りに落ちました。
0コメント